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2021.95

伝統のビジネススキルはビジネスに生かせるか?
コントロールできることだけに取り組む!?

ビジネスマンとして生産性を上げ、成果を出し続けるためのセオリーとして、「自分にコントールできない(変えることができない)ことに思い煩うことなく、できることに集中しよう」という教えは、定番中の定番のとして有名なものだろう。
自分にはどうすることもできないことばかりを気にしたり、無駄な抵抗をしたり、本来自分がやるべきことを放置してしまうのではなく、自分ができることに注力しようという意味合いなのだが、ビジネスにおいて自分にふりかかる仕事には、コントールできないことが実に多い。代表的なこととして、人事異動のこと、顧客や上司の都合、仕事の依頼先のトラブル、部下やチームメンバーの病気やトラブルなどなど、仕事自体がコントールできないのではないかというほど、コントールできないことだらけだ。
そこで、感情をコントロールするためや、生産性を上げるためのポイントとして挙げられるのが、「変えることができない(コントロールできない)ことは受け入れ、変えることができる(コントロールできる)ことだけを変える行動をする」という教えだ。
実際に、組織上層部の動きや、ほかの人たちの動向やうわさなどばかりに意識がいってしまい、仕事が手につかなくなったり、イライラしたり、さらには生産性を低下させてしまってしまうことも多く、「自分でどうにもならないことばかりに時間をつかうな!」ということだ。
それはその通りで、そんなことばかりに時間を費やしてしまっては、いい仕事ができるはずもないし、現実にこんな人はホントに多い。

「コントロール外」への取り組みはチャレンジか?

しかし、この「コントロールできることに集中しよう」という教えは、曲解している人も多いのではないか。
「自分のコントロールできることだけやる」→「できないと思ったら(できないと決めているから)拒絶する」→「できることだけやる」→「できることが広がらない、むしろ狭まる」という思考~行動プロセスに陥っていると見受けられる人があまりに多い。
いまコロナ禍もあり、これだけの変化のなかにいながら、自分自身に降ってくる仕事は、むしろ「コントロールできないこと」のほうが圧倒的に多い。「こういう制限があるけどできるか?」「これまでのことはできないけど、同様の結果を得るにはどうすればいいか」など、コントロールできるかどうかなどまったくわからない、経験したこともないような仕事の依頼ばかりだ。せっかくのチャンスなのに、自分で自分の可能性を狭めてしまうのは、あまりにもったいなく、自分がコントロールできることにこだわっていたのでは、何もできなくなってしまう。

極端かもしれないが、このコロナ禍で、同じ業種でありながら、結果に差が出てしまっている状況は、こうした「コントロール外」のことへのチャレンジや取り組み工夫の差があるのではないかと思う。
これをチャレンジととるか、無謀ととるかは、それぞれの仕事観の違いかもしれないが、間違った「コントロールできることに集中しよう」は、いまの時代にはそぐわないのではないか。
自分に「コントロールできない」ということは、ほかの人も「コントロールできない」可能性も高いわけで、ここにチャレンジうることは、自分の能力の幅を広げることにつながるはずだ。

コントロールできない「他者の評価」に対しては?

新たなことへの取り組みは別として、普段の仕事のなかではどうだろう?
我々が仕事をするなかで、コントロールできないことの最たることは、自分の仕事に対する他者からの評価ではないか。「これなら文句ないデキだろう」と思って提出しても、「ちょっと違う」「そういう意図ではない」など、ダメ出しを食らうことはしょっちゅうあることだ。
これも難しい問題だ。自分ではどうすることもできない「他者の評価」を気にするにあまり、自分にある本質的なものをゆがめてしまったり、「評価そのもの」だけに重視し、目的がずれてしまったり、アウトプットのための時間がとれなくなったりしては本末転倒であり、自分のためにもならないだろう。
逆に、人の評価は関係ないと、自分の思考や発言、行動など、「自分に変えることができる」ことに注力する仕事の仕方も悪いことではなく、そもそも、仕事にまじめに取り組む人であれば、基本的に「ベスト」だと思ってアウトプットし、お披露目するわけだから(そもそも真剣に仕事に取り組まない人はここでは無視する。そのまえに「ちゃんとやれ」ということだ)、そう簡単にアウトプットを変えられるものではなく、「評価がどうだろうが自分の仕事は同じ」「評価は自分ではどうしようもないから気にしない」と考えるのもわからなくもない。
しかしながら、大半のビジネスマンは、依頼者のニーズに応えることが仕事であり、残念ながら、他者からの低評価は、アウトプットするまでに、評価者のニーズをつかみ切れていなかったり、否定されても正当性を主張できる根拠を準備できていなかったことに起因することのほうが多い。もちろん、自分のスタイルをつくるべくクリエイターや作品性で勝負したいビジネスパーソンは別だ。自分のアウトプットのクオリティを高めることに注力すべきだろう。
そういう意味においては、我々特殊能力のないビジネスマンにとって、評価自体は「コントロールできない」とはいえ、他者の評価に応えるために「コントロールできること」に注力することが大事なのであろう。